ホールトマト缶とカットトマト缶の違いについて、よく言われるのが↓
・ホールトマト缶は加熱することで旨味が強く煮込み料理に向く
・カットトマト缶は酸味が強く煮崩れしにくく、果肉感出したい料理に向く
これはホールトマト缶が長細い種類のトマトで、カットトマト缶が丸い種類のトマトだから。
経験的に概ねそうだろうと使い分けてきましたが、改めて比較してみました。
比較方法
トマトソースをそれぞれのトマト缶で作り、違いを出来るだけホールトマト缶かカットトマト缶かという点のみにします。
同じレシピ(オリーブオイル50ml・にんにく1/2かけ・玉ねぎ1/8個・塩ちょっぴり・トマト缶1缶・出来上がりに0.7%の塩)で同じ加熱時間、出来るだけ同じように加熱し同じくらいまで煮詰めてそれぞれを比較します。
ローリエはマスキングの原因になりそうだったのではずしました。
加熱前の比較
加熱前にそれぞれ味見したところ、カットトマト缶の方が酸味が強く感じられました。
ただこれは単純にカットトマトの方が酸味の強いゼリー質がカットによりピューレと混ざっているという可能性もあるので、あまり参考にはならなそうです。
加熱後の比較
同程度(どちらも240g前後)に同時間で煮詰め、玉ねぎに塩をふったことを考慮し0.7%の塩で調味しました。
それぞれの味わいを比較すると↓
・ホールトマト缶:旨味が強く酸味が弱い、全体的に広がりのある味わい
・カットトマト缶:旨味が普通で酸味は強め、全体的にフラットな味わい
おおむね通説通りの結果となりました。
ただこれはどちらが正解というより、例えば「ホールトマト缶は煮込みに向いている」などは傾向の話。
最終的には個人の好みで、カットトマト缶の方が煮込みに向いていると思う人もいるでしょう。
乳化の差
もう1つ面白い違いあって、ホールトマト缶で作ったトマトソースは油が分離しにじみ出ているのに対し、カットトマト缶は油のにじみが少なかった=乳化・増粘の程度が高かった、という結果になりました。
ただこれはホールトマト缶とカットトマト缶の差なのかは不明。
原因としてはおそらくペクチンで、仮説としては
1. 長細い種類より丸い種類の方がペクチン含有量が多い
2. 長細い種類より丸い種類の方が製法によりペクチン含有量の多い部位が比較的使われる
3. カットとホールそれぞれで使われるのトマトピューレの加熱方法によるペクチン分解酵素の失活の差
4. カットとホールそれぞれのトマト固形物の加熱方法によるペクチン分解酵素の失活の差
5. カットとホールの差ではなくメーカーごとの製法の個差(部位の採用、固形物の比率、ピューレのチョイス、加熱方法など)
などなど…。
今回であればカットトマト缶には皮が比較的残っていたこともあり、ペクチンは皮と皮付近に多いため原因としてはまっさきに考えられますが、今回の結果のみでは「カットトマト缶とホールトマト缶の差」なのか「メーカーごとの差」なの「同メーカーでも個差」なのかの判断がつきませんね。
こちらは追って色々比較してみたいと思います。